【旋 律】前編 第十四章

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  どうか、眩しいほどの大人になって。 私も……見守ることすらできなくても、あなたのことを心から祈ります。 本当に短い間だった。 あなたと過ごしたかけがえのない時間を私は生涯忘れはしない。 あなたの大きくて広い背中で泣かせてくれたこと。 堅く握ったその手のぬくもり、私の手に伝ったあなたの涙を…… 情熱と理性の間で、切ないほどに葛藤した、かけがえのない時間を…… そして、真っ直ぐに私を見て、気持ちを伝えてくれたその瞳を…… 円香はもう一度頭を下げ、そして部員達に囲まれる楓の姿を見守ったあと、そっと背を向け、 ゆっくりと会場を後にした。   
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