【旋 律】前編 第十五章

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  彼は医務室の扉を開き「田中先生、いますか?」と声をかけたが、そこはもぬけの空だった。 「いないのか。 あっ、君はそこに座って」 その言葉に亜美は「はい」と丸椅子に座った。 彼は薬箱から消毒液などを取り出し「それじゃあ手を見せて」と手を差し伸べた。 「は……はい」 彼を前にウットリと惚け、思わず傷ついていない方の手を差し出した亜美に、 「いや、こっちを出されても…」 と彼はクスクス笑った。 「あっ、すみません」 亜美は真っ赤になりながら、慌てて傷ついた手を差し出した。 彼は優しくその手を取り、血が滲んだ部分に消毒液をつけた。    
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