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ランチを食べ終えた後もコーヒーを飲みながらしばし、他愛のない話を続けた。
互いの仕事の話、亜美の話。
14年の歳月が嘘のように、何の違和感もなく、自然に過ごせていた。
甘苦しい胸の痛みを感じつつも、会話がこの上なく楽しく心地よいほど寛ぎ、落ち着くことを感じていた。
「私と会わなくなった後、あなたはどんな人生を歩んできたの?どんな恋愛をしたの?」
色々な話をする会話の流れで円香はどこか軽い気持ちで楓の過去に触れた。
楓は「そうですね」と微笑し、ゆっくりと手を組んだ。
「……円香さんと会わなくなった後、すぐ受験に向けて勉強に打ち込みました。
高校時代の後半は色恋沙汰にはまったく縁がありませんでしたよ。
そして志望大学に入学できて男子校とは違い、たくさんの異性と共に学ぶようになり、楽しくはあったんですが心惹かれる人には、なかなか出会えなかったんです。
まるで自動販売機で購入するように簡単に恋人を手に入れる女子大生の感覚に凄く抵抗があって……・」
そう告げた楓に円香は「楓君らしい」と小さく笑った。
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