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「でも、19の時、講座の飲み会があって未成年にも関わらず先輩に物凄く飲まされて、意識をなくしたんです。
……気がついたら同じ講座の女の子の部屋のベッドで寝てたんです」
サラリとそう告げた楓に、円香はドキリとし目を開いた。
「えっ、待って、その記憶はないのよね」
「はい、記憶はないし特別な恋愛感情はなかったんですけど、そうなった以上、ちゃんとお付き合いしないと、と思い、その子と付き合うことになりました」
バツ悪そうに苦笑しながらそう言った楓に、円香は呆然としつつも、
「やっぱり、真面目なのね」
と納得したように頷いた。
「その後、その彼女とは二年間付き合いました。
好きという気持ちがないところからのスタートだったんですが、付き合っている内に好きになることが出来ました。でも……」
話を続けようとすると楓に、円香は慌てて手をかざした。
「あっ、ごめんなさい。
根掘り葉掘り聞くつもりじゃなかったのよ。
あなたがそんなに答えてくれると思わなかったし、ごめんなさい」
すまなそうに目を細める円香に、楓は「いいえ」と首を振った。
「ザッとでも聞いてもらいたいんです。僕の14年間のことを……」
そう言って楓は真っ直ぐに円香を見据えた。
その強い眼差しに、バクンと鼓動が跳ね上がる。
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