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「別に一流大学に入ってもらいたいわけじゃないんですが、落第はさせたくないんですよ。
どうしたら勉強してくれると思います」
そう尋ねた彼女に、楓は「そうですね」と腕を組んだ。
「これは飽くまで提案なんですが、『毎日一時間半だけでいい』と言ってみてはどうですか?」
「一時間半の勉強じゃ足りないでしょう?」
「人の集中力は大体一時間半くらいしか続かないものなんです。
やみくもにダラダラ続けさせずに一時間半キッチリやらせて、それさえ出来た後は好きなことをしても文句を言わないと約束するんです。
その代わり、一時間半はキッチリ集中して勉強するよう伝えてみてはいかがですか?」
「そうですね、今のままでも一時間もやっていないし、『たった一時間半』と言ったらいいかもしれない。試しにそう提案してみます。
先生、ありがとうございます。
そうそう、そしてこれ頂きます。
私、円香さんの作ったバスボムが大好きなんです」
「ありがとうございます」
そう言ってニッコリ笑う楓に彼女はクラクラしたように頬を赤らめ、その姿を観察していた亜美は
今やうちの看板男子だわ、
とクスクス笑った。
するとそんな亜美の姿に気付いた楓が「亜美」と顔を上げた。
「あらぁ、亜美ちゃん、かわいいわね。デート?」
そう尋ねた彼女に、
「はい、デートです。行ってきます」
と声を上げた後、チラリと楓を見た。
「ねっ、お父さん、この格好カワイイと思う?」
モジモジと恥ずかしげに尋ねた亜美に楓はクスリと笑い優しく頷いた。
「すごくカワイイよ」
亜美はエヘヘと笑い、
「ありがとう。それじゃあ、行ってきます」
と手を振り元気に家を出た。
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