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「やっぱり話題の映画だけあって、迫力が凄かったね。サルが凄かったね」
映画を観終えた後、近くのカフェでラテを飲みながら亜美は興奮気味にそう声を上げた。
「ああ、マジでサルが凄かったな」
向かい合って座りながらサルが、サルが、と映画の感想を伝え合い、
「ね、夕食はどこで食べようか」
と目を輝かせて尋ねた亜美に、薫はバツ悪そうに「あー」と声を上げ腕時計に目を向けた。
「悪ぃ、これから用事があって」
すまなそうに手を合わせた薫に、亜美は「へっ?」と目を開いた。
「用事なんて初耳だし、それにまだ夕方だよ?もう行かなきゃいけないの?」
「俺ももっとゆっくりしていたんだけど、今日はここで解散な」
薫はそそくさと席を立ち、悪ぃと、手を上げた。
「えっ、もう行くの?
いつもみたいに家まで送ってくれないの?」
驚き目を開く亜美に、
「マジでゴメン。遅れそうなんだ」
と言ってそそくさと店を出て行った。
一人カフェに残された亜美は呆然としながら薫の背中を見送り、
「やっぱり、なんか変だよ」
と低い声で漏らした。
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