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「14年前のディベート大会地区予選!
俺は応援観戦に行ってたんだ。
お前が優勝の挨拶を途中で止めて、まっすぐ二階席を見ている。
『おや、広瀬は何を見ているんだ?』と俺も二階席を見ると、そこには可愛い年上の女性の姿が!見詰め合う二人。
『ああ、広瀬とあの人は何か関係があったに違いない!』すべてを察した俺。
そして、あの後のお前の挨拶!挨拶の中に込めた、切ない告白。
周囲の人間は、挨拶だとしか思っていない。
でも二人にしか分からない愛の告白。
あっ、俺は分かっていたけどな。
あの時の切なさと来たら……俺は一人で会場の外に飛び出て、トイレで膝を抱えて、おいおい咽び泣いたんだぜ」
布施は思い出しながら、うんうん、頷き、そして横目で楓を見た。
「そして14年の歳月を経て、その女性を射止めるとは、さすがは広瀬博士。
文学の世界だよなぁ」
シミジミとそう語る彼に、
「布施、お前は、うるさい」
と楓は肘で布施の首を抱え込み、締める真似をした。
そんな二人の仲良さそうな姿に、皆は声を揃って笑った。
楽しく微笑ましい、幸せな結婚式だった。
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