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――――……
「それでね、
理沙さんは、お父さんのことが好きだったわけなのよ。
私を娘だと知らずにそんなこと言って来ちゃったもんだから、もう不安で不安で。
だってあーんな綺麗な人に誘惑されたら誰だって揺れるじゃない?
お父さんの気持ちが揺れたら大変だと思うんだけど、美樹は『放っておいて様子を見たら?』なんて言うんだよ?」
薫の部屋に訪れた亜美は、散乱した雑誌をまとめながら、金井理沙のことについて熱く語った。
そんな亜美の熱弁に、薫は、へぇと感心の息をついた。
「そっか、金井は兄貴が好きなんだ。なんだか納得」
「思い当たる節があるの?」
「ああ、前から兄貴のことをすげぇ聞いてきてたし。
でもその癖、兄貴が近付いて来ると、すぐ姿を消したり、もしくは不自然なくらいツンとしたりしてんの。
あれは好きの裏返しだったんだな。
大方、兄貴が結婚して逆に気持ちが募ったってところだろうな。これから、あいつきっと積極的に出るぜ」
そう言ってニッと笑った薫に、
「笑い事じゃないわよ、こっちは家庭の危機なのよ」
と亜美はムキになって身を乗り出した。
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