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「家庭の危機って大袈裟だな。
美樹ちゃんの言うとおり、放っておけよ。
俺も興味あるな。兄貴がどう出るか」
「もう、そんな悠長に……」
亜美がハァと息をつくと、「なあ」と薫は伺うように顔を覗き込んだ。
「亜美、俺のこと好き?」
「うん、好きだよ」
その言葉に薫は満面の笑みで、亜美にギュッと抱き付いた。
「俺も亜美が大好きだ」
そう言って、そのまま勢いよくベッドに押し倒した。
「とにかく一回しちゃおうぜ。
そしたら意外に大丈夫かも、ってなると思うし、なっ」
ベッドに組み敷きながらそう言った薫に、
「……ったく、人が家庭のことで悩んでるのに……」
と亜美は顔をしかめたまま、薫をヒョイッと巴投げした。
「うわッ!」
意図も簡単にひっくり返され目を丸くする薫に、
「本当にムードも何もないんだから、そういうところは嫌い。
私はお父さんが心配でそれどころじゃないんだから!」
と亜美は頬を膨らませ、勢いよく部屋を出て行った。
「ムードってどんなんだよ。
ってどんだけ兄貴のこと心配してんだよ」
と薫はひっくり返ったまま、そう漏らした。
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