【旋 律】後編 第四章

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  「家庭の危機って大袈裟だな。 美樹ちゃんの言うとおり、放っておけよ。 俺も興味あるな。兄貴がどう出るか」 「もう、そんな悠長に……」 亜美がハァと息をつくと、「なあ」と薫は伺うように顔を覗き込んだ。 「亜美、俺のこと好き?」 「うん、好きだよ」 その言葉に薫は満面の笑みで、亜美にギュッと抱き付いた。 「俺も亜美が大好きだ」 そう言って、そのまま勢いよくベッドに押し倒した。 「とにかく一回しちゃおうぜ。 そしたら意外に大丈夫かも、ってなると思うし、なっ」 ベッドに組み敷きながらそう言った薫に、 「……ったく、人が家庭のことで悩んでるのに……」 と亜美は顔をしかめたまま、薫をヒョイッと巴投げした。 「うわッ!」 意図も簡単にひっくり返され目を丸くする薫に、 「本当にムードも何もないんだから、そういうところは嫌い。 私はお父さんが心配でそれどころじゃないんだから!」 と亜美は頬を膨らませ、勢いよく部屋を出て行った。 「ムードってどんなんだよ。 ってどんだけ兄貴のこと心配してんだよ」 と薫はひっくり返ったまま、そう漏らした。
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