【旋 律】後編 第六章

12/31
前へ
/31ページ
次へ
  そして墓地脇の生花店で足を止め、菊の花を買おうとする楓の姿に、 ああ、お墓参りなんだ。 と亜美はようやくホッとして胸を撫で下ろしつつ、 「ねぇ、お父さん、菊の花なんてやめようよ。 別にお墓参りに菊の花じゃなきゃいけないってことはないんだし、私はひまわりがいいなぁ」 とイキイキとしたひまわりを指した。 そんな亜美に楓は少し笑って「そうだね」と、ひまわりの花束を購入し、水汲み場で水の用意をして、墓地の中に足を踏み入れた。 「円香とは結婚前に来たんだけど、亜美はまだだったから、ずっと連れてきたいと思ってたんだ」 楓はそう言って『広瀬家の墓』と書かれた墓石の前で足を止めた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1446人が本棚に入れています
本棚に追加