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「だけど円香ともう会わないと決意したあと、やっぱり元の自分に戻ったよ。
感情的にならない以前の自分にね……。
円香はもう幸せに暮らしていると思い込んでいたから、僕はあの時の円香のように感情を取り戻せる人を探し続けた。
過去に交際した彼女達は僕が優しく穏やかだけど心が見えないって、皆が皆そう言ったよ」
亜美は何も言うことができず、ただ切なく目を細めて楓を見上げていた。
「そして円香と再会して、また僕は感情を取り戻したんだ。
愛しくて切なくて、もう二度と離したくないと思った。
僕のプロポーズを立ち聞きしていた薫に後から言われたよ。
『兄貴じゃないみたいだった』ってね……。
そうではなくて、それが本来の僕なんだと思うんだ」
「お父さん……」
胸に熱いものが込み上がることを感じながら、亜美はキュッと拳を握った。
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