【旋 律】後編 第六章

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  「俺より広瀬の方が心理学に向いてそうだけどな」 そう言いコーヒーを口に運んだ布施に、 「人の深層心理に触れて仕事をする勇気はないな」 と楓は肩をすぼめた。 「深層心理に触れる勇気はない、か。お前らしい言い回しだな」 そう言って小さく笑い合っていると『ゴトッ』と何かが落ちる音がした。 「なんか落ちたぞ」 「ああ、机の下みたいだな」 そう言って楓は立ち上がり、机の下に手を伸ばし、「……これは?」と盗聴器を手に目を開いた。 「なんだそれ、盗聴器じゃないか」 そう声を上げた布施に、 「やっぱりそうだよな。どうしてこんなものが」 と楓はポカンとしながら盗聴器を見た。 「情報の漏洩だよ、すぐに警察に調査させたほうがいいぜ」 強い口調でそう言う布施に、楓は弱ったように眉を下げた。  
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