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理沙が楓に告白した数日後、
亜美は自分が楓の娘であることを打ち明け、それまで黙っていたことを真摯に謝ったのだった。
『……そうだったんだ。
あなたのお母さんが広瀬講師の奥さんなんだ。
広瀬講師が17歳の頃からずっと想い続けてきた相手なら私なんて入る余地なしよね。
でも、そういうところも講師らしいわよね。
“文学の世界から来た人”って感じで……』
そう言って切なく微笑した理沙。
『理沙さん……』
何を言っていいのか分からずに困ったように眉を寄せている亜美に、理沙は笑顔を見せた。
『でも私、それを聞いてしまったら、奥さんより亜美ちゃんの方が羨ましくなってきちゃった』
『えっ?』
『だって、あなたは一生、広瀬講師に愛して守ってもらえるんですものね。
広瀬講師のあなたを見る目は本当に暖かくて優しくて、実は嫉妬してたのよ』
そう言ってイタズラな笑みを見せた理沙に、
亜美は、すまなく思いながらも、何ともいえない嬉しさに包まれた。
そうなのだ。
私は、世界一素敵なお父さんに一生、愛して守ってもらえるんだ。
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