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そんなある日、クラスメートに貸していた本が返って来たので、なんとなくそれを眺めている時のことだった。
手にしている本の背表紙を見るなり、広瀬が驚いたように近付いてきた。
「布施、この作者の本、持ってるんだ?」
俺が広瀬に話し掛けることがあっても、広瀬から声を掛けられることは皆無に等しい。
珍しい出来事に驚きながら「ああ」と頷いた。
「……親父の本だけどな」
「この作者の本はもう絶版になってて、もう出版社に行っても手に入らないんだ。
古本屋やネットオークションで探してても、皆大事に持っているみたいで見付からなくて」
本に視線を向けたままそう告げる広瀬に、
「この作者の本ならうちに結構揃ってるぜ。なんなら見にくるか?」
戸惑いながらそう言うと、「いいのか?」と目を開いて身を乗り出した。
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