【旋 律】後編 第八章

11/32
前へ
/32ページ
次へ
  「あっ、そうそう、楓。 金曜日ね、会社の飲み会があって、出欠の返事出さなきゃいけないんだけど、何か予定入ってた? 楓に予定が入ってるなら、欠席するつもりなんだけど」 そう尋ねた母親に、 ……金曜は確か友達とライブに行くって言ってたよな? と思っていると、 広瀬は「金曜日……」とほんの一瞬、目を伏せ、すぐに顔を上げてニッコリと微笑んだ。 「ううん、大丈夫だよ。 予定は何も入ってないから行っておいでよ。 薫の面倒は見るから」 「本当?嬉しいわ~」 そんな広瀬に、はっ?と目を開いた。 ――どうして、予定が入ってないなんて言うんだ? あんなに嬉しそうに、楽しみにしていたのに。 すると広瀬はゆっくり立ち上がり、「じゃあ、部屋に行ってるよ」と母親に告げ、「布施、こっちが俺の部屋」とこちらに目を向けた。 「……ああ」と頷き、広瀬と共にリビングを出た。    
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1434人が本棚に入れています
本棚に追加