【旋 律】後編 第八章

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  「今日、たまたま話を持ち掛けられただけで、そんな楽しみにしていたわけでもないよ」 目をそらしながらそう告げる広瀬に、思わず息をついた。 ――嘘つけよ、あんな珍しいくらい屈託のない笑顔を見せといて。 本当は凄く楽しみにしていたくせに。 そう思ったが、これ以上ふみ込まないでほしい、という雰囲気に、何も言わないことにした。 そして、改めて広瀬の部屋を見回した。 シンプルな部屋だ。 本棚にビッシリの本、そして机にベッド。 学者の部屋かよ、 と小さく笑い、絨毯の上に、あぐらをかいて座った。  
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