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「エロ本とかないの?」
ニッと笑ってからかうよう尋ねると、広瀬は平静な表情をこちらに向けた。
「ああ、あるよ。お前のすぐ後ろの本」
思いもしない即答に、驚きながら後ろを振り返ると『源氏物語』が並んでいた。
――源氏物語?
「広瀬、お前、源氏物語でするのか?」
思わず露骨に尋ねると、広瀬はプッと吹き出した。
「冗談だよ」
その言葉にポカンとしたあと、
「いや、お前が言うと冗談に聞こえねぇよ」
まんまと引っ掛かったことに肩をすぼめてそう漏らすと、
「いくらなんでも無理だな。古文の読解の方に意識が集中するし」
サラリとそう告げた広瀬の思いもしない言葉に、たまらなくおかしくなり、二人で顔を見合わせて笑った。
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