【旋 律】後編 第八章

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  ひとしきり笑ったあと、そしてまた部屋を見回し、ふぅ、と息をついた。 「……ここ、広瀬の部屋なんだな。 なんだか、ようやくお前が見えてきた」 そう漏らした自分に、広瀬は「え?」とこちらを見た。 「……成績優秀、温厚博識、才色兼備っていう四字熟語を並べたような実態がつかめない男だったからさ。 なんか裏があって家では全然違うかと思ったけど……家の中でも、お前は家族思いの優しい男なんだな」 シミジミとそう告げると広瀬は少し肩をすぼめて「そうかな?」と苦笑を浮かべた。 「……広瀬は俺のこと、馬鹿だと思ってるだろ」 唐突にそう尋ねた自分に、 「馬鹿?」 と広瀬は怪訝に眉をひそめた。 「女の話とか、自慢話ししかしない馬鹿」 そう言いながら、身体を伸ばしてそのまま絨毯の上にゴロンと寝転んだ。  
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