【旋 律】後編 第八章

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  そう、教室でクラスメート達に何度も武勇伝を友人に話して聞かせた。 女をこうしてベッドに連れ込んだとか、簡単な別れ方とか、必要以上に大きな声で。 今、気付いた。 俺は前の席に座るこの男を、強烈に意識していた。 自分を誇示していると思っていたけど、それは違った。 この男に、何か気に留めて欲しかったのだ。 ――中学の時に、俺の近くでとにかく大声で笑ったり話したりする女がいた。 「うるせーよ、お前」と、文句を言うと、彼女は泣いた。 俺のことが好きで、気を引きたくて、大きな声を出していたことを後から知った。 ……まるで俺はあの時の、あの女の子だったんだ。  
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