【旋 律】後編 第八章

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  「……そうかもな」 ポツリとそう漏らした広瀬に、「えっ?」と目を開いた。 「……ただ、お前が羨ましいだけなのかもしれない」 その言葉は、徹底的だった。 負けた、と思った。 しばしの沈黙のあと、やっと口に出来た言葉は、「俺、帰るわ」の一言だった。 「ああ」と頷く広瀬。 そのまま黙って広瀬の部屋を出て、玄関で「おじゃましました」と言って家を出た。 歩きながら、この上なく惨めな気持ちだった。 俺は本当にちっぽけで、ショボい男だった。 今すぐにでも、どこかの女の懐に飛び込みたい、と思った。 そして、それから広瀬が苦手だと感じ、避けるようになった。    
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