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「……そうかもな」
ポツリとそう漏らした広瀬に、「えっ?」と目を開いた。
「……ただ、お前が羨ましいだけなのかもしれない」
その言葉は、徹底的だった。
負けた、と思った。
しばしの沈黙のあと、やっと口に出来た言葉は、「俺、帰るわ」の一言だった。
「ああ」と頷く広瀬。
そのまま黙って広瀬の部屋を出て、玄関で「おじゃましました」と言って家を出た。
歩きながら、この上なく惨めな気持ちだった。
俺は本当にちっぽけで、ショボい男だった。
今すぐにでも、どこかの女の懐に飛び込みたい、と思った。
そして、それから広瀬が苦手だと感じ、避けるようになった。
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