【旋 律】後編 第八章

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   自分にとって女にフラれるというのは、最大の屈辱だ。 それを簡単に口に出来ることも信じられなかった。 動揺のあまり何も話すことが出来ずにいる自分の横で、 「どうして、フラれたんだ?」 と能天気なクラスメートがストレートに尋ねる。 「それが家の用事でデートを断ることが続いたら、マザコンだって言われて」 その言葉に怒りがこみ上げてきた。 なんだよ、あの馬鹿女! 広瀬に付き合ってもらいながらそんなこと言うなよ。 「広瀬、マザコンなのか?」 アハハと笑いながら尋ねるクラスメートと「そう見えるみたいだな」と広瀬も笑って答えた。 すると近くで話を聞いていた広瀬の馴染みの友人が大きく息をついた。 「……それは仕方ないよ、広瀬は母親に気ぃ遣いすぎだもんな。 血のつながりがないからって、そんなに気を遣わなくていいと思うよ」 その言葉に、心底驚いた。 「……え? 広瀬、あの母さん、お前の母親じゃないのか?」 「ああ、うん。 俺の母親は早くに他界したから」 小さく頷く広瀬。  
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