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彼女のアパートを出ると、辺りはもう真っ暗になっていた。
まさかビンタされるとは思わなかったな。
そう思い、苦笑しながらマンションが建ち並ぶ住宅地を歩いていると、
「ねえ、お兄ちゃん、帰ったら、すぐアイス食べてもいい?」
と子供の声が耳に届いた。
「帰ったら、まず夕食を食べないと。アイスはそのあとだな」
と、どこかで聞いた声。
「ねぇ、お兄ちゃん。
今日、ママ、遅いのかな」
「もう少しで帰って来るよ」
兄弟らしい会話を耳にしながら、そのシルエットに目を凝らしてみた。
「――広瀬?」
半信半疑で声を掛けると、「ああ、布施」と声が返って来ると同時に外灯の下で広瀬の姿がハッキリ見えた。
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