【旋 律】後編 第八章

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  彼女のアパートを出ると、辺りはもう真っ暗になっていた。 まさかビンタされるとは思わなかったな。 そう思い、苦笑しながらマンションが建ち並ぶ住宅地を歩いていると、 「ねえ、お兄ちゃん、帰ったら、すぐアイス食べてもいい?」 と子供の声が耳に届いた。 「帰ったら、まず夕食を食べないと。アイスはそのあとだな」 と、どこかで聞いた声。 「ねぇ、お兄ちゃん。 今日、ママ、遅いのかな」 「もう少しで帰って来るよ」 兄弟らしい会話を耳にしながら、そのシルエットに目を凝らしてみた。 「――広瀬?」 半信半疑で声を掛けると、「ああ、布施」と声が返って来ると同時に外灯の下で広瀬の姿がハッキリ見えた。  
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