【旋 律】後編 第八章

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  「お兄ちゃんのオムライス、美味しいよ」 口にいっぱいケチャップをつけながらそう言う薫に、広瀬はクスクスと笑った。 「良かった。 それより薫、口にいっぱいついてる。それにグリーンピースもちゃんと食べないと」 その言葉に薫は顔をしかめたあと、意を決したようにグリーンピースを口に運び、「食べれた!」と誇らしげな顔を見せた。 「えらいな、薫」 そう言って弟の頭を優しく撫でる広瀬の姿を前に、不思議な気持ちになっていた。 なんていうか、広瀬はもっと裏のある男だと思っていた。 こんな風に見た目通りに優しい男だとは思わなかった。 こんな風にオムライスを作ったりする姿も、想像もつかなかった。 そう思い、自分のオムライスに視線を落とし、そしてグリーンピースを見て苦笑した。 正直、自分もグリーンピースは苦手だった。 しかしこの場で食べられないと言うわけにもいかず、意を決して無理して口に運んだ。 「…………」 広瀬の作ったオムライスに入っていたグリーンピースは、思ったよりも不味くはなかった。  
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