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「読みたければ、好きなだけ貸すぜ」
その言葉に「いいのか?」と嬉しそうにこちらを見る。
その姿が子供のようで可笑しく感じながら、
「ああ、何冊でもどうぞ」
と告げると、広瀬は嬉しそうに数冊取り出し「じゃあ、これだけ借りてもいいか?」と嬉しそうにこちらを見た。
「それだけでいいのか?」
「とりあえず」
その言葉に、今度はこちらの頬が緩んだ。
『とりあえず』
それは、また次回もあるということなのだ。
「それじゃあ、俺の部屋に行こうぜ」
そう言って部屋に向かおうと書斎を出ると、
「あら、学さん、帰ってたのね」
と階段にいた母親が意外そうな声を上げた。
広瀬は母を目にするなり朗らかな笑みを浮かべ「お邪魔してます」と頭を下げた。
「あら、こんにちは。
学さんがお友達を家に呼ぶなんて珍しいわね」
そう言った母に「何か用かよ?」と睨みながらそう尋ねると、
「用ってことはないわよ、こんなに早くに帰って来るなんて珍しいから」
話している途中で母に背を向け、足早に自分の部屋に入って行った。
「まったく、あの子は……」
そう舌打ちし踵を返して階段を降りていく母の足音を背中に聞きながら部屋に入った。
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