【旋 律】後編 第九章

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  政略結婚で愛のない結婚をした両親。 互いにプライドが高く一歩も譲らず、互いに愛人を作りながら、それを罵りあう。 世間体のために、決して離婚はしない。 そんな夫婦、そんな家庭の中に置かれる子供は、まさに悲劇だった。 両親が揃うことを怖いとまで感じてしまう自分が情けなかった。 家にいるときは音楽に逃避し、外にいるときは一時慰めてくれるぬくもりを必要以上に欲した。 強がり続けながら、嘲笑しながら、 本当は ずっとずっと、苦しかったんだ。 涙が止まらない。 広瀬に背を向けたまま、絶え間なく流れる涙を拳で必死に抑えていた。
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