【旋 律】後編 第十章

14/37
前へ
/37ページ
次へ
  「そうだな、せっかくだから亜美ちゃんに相談しようかな」 そう言って微笑んだ布施に、亜美は「はい」と真剣な目で頷いた。 「……広瀬の話は冗談なんだけど、俺は本当につらい恋をしているんだ。 その人は結婚していて、とても幸せにしている人。 俺のことは何とも思っていない。 でも俺はどうしても好きなんだ。なんとか諦めたい、でも諦められない。 ―――どうしたらいいと思う?」 そう言って真っ直ぐに視線を合わせた布施に、亜美は「うーん」と腕を組み少し考えて、 「あの……遠慮なく言ってもいいですか?」 「もちろん」 布施が頷くと、亜美はコホンと咳払いをした。 「そんなのはビシッと告って、ガツンと失恋ですよ!」 強い口調でそう言い放った亜美に、布施は目を丸くした後アハハと笑った。 「胸に響いたよ。ありがとう、亜美ちゃん」 「どういたしまして」 得意気に胸を張った亜美に、布施はプッと吹き出し、二人は顔を見合わせてクスクスと笑い合った。    
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1437人が本棚に入れています
本棚に追加