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「うん、信用してるよ」
迷いもせずに頷いた楓に、円香は「すごい、即答」と小さく笑い、
「……布施さんは高校生の頃からずっと楓くんを見て来たんだものね。
なんだか羨ましいな……」
シミジミとそう漏らした円香に楓はプッと笑った。
「羨ましいって」
「布施さんだけじゃなくて、私の知らなかった楓くんを知ってる人を羨ましいと思っちゃうの。
14年間の空白が寂しいなんて……今更よね?」
円香はそう言って小さく息をつき、寂しげに目を伏せた。
「……円香」
優しい声にそっと顔を上げると、
「おいで」
と手を広げた楓に、円香の鼓動はバクンと跳ねた。
「……楓くん」
頬を赤らめながらモジモジと歩み寄る円香を、楓は優しく抱き留めて、膝の上に座らせた。
「か、楓くん、亜美が急に帰って来たら恥ずかしいかも」
膝の上に抱かれて目を丸くする円香に、
「大丈夫、帰って来たら二階まで響くような声で『ただいまー』って声を上げてくれるから分かるよ」
楓はクスクス笑い、髪を撫でて頬に手を触れた。
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