【旋 律】後編 第十章

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  「うん、信用してるよ」 迷いもせずに頷いた楓に、円香は「すごい、即答」と小さく笑い、 「……布施さんは高校生の頃からずっと楓くんを見て来たんだものね。 なんだか羨ましいな……」 シミジミとそう漏らした円香に楓はプッと笑った。 「羨ましいって」 「布施さんだけじゃなくて、私の知らなかった楓くんを知ってる人を羨ましいと思っちゃうの。 14年間の空白が寂しいなんて……今更よね?」 円香はそう言って小さく息をつき、寂しげに目を伏せた。 「……円香」 優しい声にそっと顔を上げると、 「おいで」 と手を広げた楓に、円香の鼓動はバクンと跳ねた。 「……楓くん」 頬を赤らめながらモジモジと歩み寄る円香を、楓は優しく抱き留めて、膝の上に座らせた。 「か、楓くん、亜美が急に帰って来たら恥ずかしいかも」 膝の上に抱かれて目を丸くする円香に、 「大丈夫、帰って来たら二階まで響くような声で『ただいまー』って声を上げてくれるから分かるよ」 楓はクスクス笑い、髪を撫でて頬に手を触れた。
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