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ゆっくりと唇を離し、いつものように柔らかな笑みを見せる楓に、
「い、今の楓くんはちょっと意地悪だった」
と赤くなりながらそう漏らすと、
「意地悪な僕は嫌い?」
と顔を覗き込む楓に、また動悸が激しくなる。
「う、ううん」
また違った楓くんに、ドキドキもしちゃった。
恥ずかしそうに首を振る円香に、楓はクスリと笑った。
「――円香。
空白の14年間に僕も嫉妬することがあるよ。
その度に、今みたいに奪うようなキスをしたくなる」
「……楓くん」
「そうしたら、こうしていられることが嬉しくて、戻らない時間なんてどうでもよくなるよ」
そう言って今度は柔らかく唇を合わせた楓に、円香は言葉を詰まらせた。
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