【旋 律】後編 第十章

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  ゆっくりと唇を離し、いつものように柔らかな笑みを見せる楓に、 「い、今の楓くんはちょっと意地悪だった」 と赤くなりながらそう漏らすと、 「意地悪な僕は嫌い?」 と顔を覗き込む楓に、また動悸が激しくなる。 「う、ううん」 また違った楓くんに、ドキドキもしちゃった。 恥ずかしそうに首を振る円香に、楓はクスリと笑った。 「――円香。 空白の14年間に僕も嫉妬することがあるよ。 その度に、今みたいに奪うようなキスをしたくなる」 「……楓くん」 「そうしたら、こうしていられることが嬉しくて、戻らない時間なんてどうでもよくなるよ」 そう言って今度は柔らかく唇を合わせた楓に、円香は言葉を詰まらせた。
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