【旋 律】後編 第十章

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  「なんだか薫、様子が違わない?元気?」 そう言って隣に腰をかけて顔を覗き込んだ亜美に、薫は小さく笑った。 「元気だよ。道場の合宿にバイトにてんやわんやだったけど。 それよりとりあえず、カフェにでも行こうか」 そう言って腰を上げかけた薫に、亜美は「ううん」と首を振り、 「ここでいいよ。すごく気持ちがいいし」 と流れる風に心地良さそうに目を細めた。 「そう…だな、ここ気持ちいいな」 そう言って頷く薫に、 やっぱりなんか変だなぁ、と亜美は眉を寄せた。 「道場の練習、厳しかったの?」 「ああ、すっげぇ厳しかった。 武道って『心技体』揃ってこそだって、格闘だけじゃなくて師匠に色んなことも教わったんだ。 なんていうか、自分を見詰め直すいい機会になったっていうか」 「そうだったんだ、なんだか凄いね」 亜美はへぇ、と目を開いた。  
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