【旋 律】後編 第十章

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  布施は『ふぅ』と息をつき、解放感に柔らかく目を細めた。  何もかもが軽くなったと、感じていた。 今まで重いものを胸に詰めて来ていたんだ。 パンパンに詰めて詰めて、苦しくなっていたんだな。 「あー、スッキリした。 お前も結婚して幸せになったし、俺も前進しなきゃな」 そう言って身体を伸ばした布施に、楓は何も言わずに笑みを返した。 「でも、心惹かれるような女ってなかなかいねぇんだよな。 もしかして俺、女の体だけが好きなのかもしれないな」 露骨な言葉に「まったく、相変わらずだな」と楓は顔をしかめた。 「それにしても、亜美ちゃんは本当にすごい子だな。 もっと若ければ、絶対にアタックしたなぁ」 「何言ってんだよ」 眉をひそめた楓に、布施はプッと笑った。
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