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「まったくお前は頑固で頑なで、変化や男に臆病で、いい歳してバージンみたいだよな」
そう言った布施に、裕子は驚いたように顔をあげた後、耳まで真っ赤になった。
布施は『えっ?』と目を開いたあと、顔をしかめた。
「……マジで?」
裕子はキュッと唇を噛んだまま、何も答えなかった。
「……お前は俺と同じ歳だから、32歳だよな。
この前、19の子が未経験で天然記念物みたいだと思ったけど、あの子が天然記念物なら、お前は絶滅危惧種だな」
「お、大きなお世話よ!
大体、天然記念物とか絶滅危惧種とか言うけど、皆口外してないだけで、私のような女も結構いると思うわよ。
この前読んだ『LockOn』ってケータイ小説の主人公サクラちゃんもいい大人になっても未経験だったし。
ま、まぁ、サクラちゃんは24歳だったけど」
「二次元の話を持ち出すなよ。マジで引くから」
「ご、ごめん、ちょっとムキになって」
「実際大人で未経験もそりゃいるだろうけどな。
……それにしても佐伯は、32年間もそういうチャンスにめぐり合わなかったのか?」
真顔で尋ねた布施に、裕子は真っ赤になって俯いた。
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