【旋 律】後編 第十一章

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  「……捨てるチャンスだけなら一応あったわよ。 でも心の妥協ができなかったの。 私、片想いでも好きな人がいたら、その人を想い続けてしまって。 その間、誰かにアプローチされても悲しいほどに気持ちが動かないのよ。妥協できたらよかったのに」 モジモジとそう告げた裕子に、布施はクスクス笑った。 「馬鹿みたいに一途なお前らしいなぁ。 今は焦ったりしないのか?」 「もう、いいのよ。 ここまで来たら焦りもしないわ。 『誰でもいいから』なんて決して思わない。ここまで来たら好きな人とそうなりたいの。だけどそうなることはないって分かってるんだけどね」 裕子はそう言って苦笑を浮かべながら息をついた。 そんな裕子を見詰めながら、布施はニッと笑った。 「じゃ、抱いてやろうか?」 「えっ?」 「お前、俺のこと好きなんだろ?」 頬杖をつきながら強い口調でそう告げた布施に、裕子は耳まで真っ赤になった。  
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