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「……捨てるチャンスだけなら一応あったわよ。
でも心の妥協ができなかったの。
私、片想いでも好きな人がいたら、その人を想い続けてしまって。
その間、誰かにアプローチされても悲しいほどに気持ちが動かないのよ。妥協できたらよかったのに」
モジモジとそう告げた裕子に、布施はクスクス笑った。
「馬鹿みたいに一途なお前らしいなぁ。
今は焦ったりしないのか?」
「もう、いいのよ。
ここまで来たら焦りもしないわ。
『誰でもいいから』なんて決して思わない。ここまで来たら好きな人とそうなりたいの。だけどそうなることはないって分かってるんだけどね」
裕子はそう言って苦笑を浮かべながら息をついた。
そんな裕子を見詰めながら、布施はニッと笑った。
「じゃ、抱いてやろうか?」
「えっ?」
「お前、俺のこと好きなんだろ?」
頬杖をつきながら強い口調でそう告げた布施に、裕子は耳まで真っ赤になった。
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