【旋 律】後編 第十一章

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  ふぅ、と息をつき、布施から渡されたプライベート用名刺をそっと手に取り、その住所を見て、また息をついた。 都内の高級マンションに住んでいることは知っていた。 『お前、俺のこと好きなんだろ?』 ああ、もう! とクッションに顔を押し付けた。 ―――悔しい! ああ、そうよ、再会してからと言うもの、私はずっと好きだったわよ! あんな最低男だけど、なんだか知らないけど、好きになってたわよ! 布施くんは気付いてて、今まで気付かない振りをしてたんだ。 なのにどうして、あんなこと言い出すわけ? 興味もない女には、指一本触れないくせに! 32歳で男性経験なしっていう、絶滅危惧種に興味を持ったわけ?  
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