【旋 律】後編 第十一章

26/32
前へ
/32ページ
次へ
  そっと顔を上げ、鏡を見た。 長めの黒髪が重たく頭の上に乗っていた。 確かに冴えない男日照り全開の女だ。 それでも誰でもいいからとにかく経験だけはしよう、なんて思えなかった。 ちゃんと好きな人と、って思っていた。 でも、こんな展開を求めていたわけじゃない。 また息をついて、苦しさを誤魔化すようにクッションに顔を押し付けた。 『全く、お前は頑固で頑なで、変化や男に臆病で……』 そう言った布施の言葉を思い出し、顔を上げた。  
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1408人が本棚に入れています
本棚に追加