【旋 律】後編 第十一章

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  ――もう、32歳になってしまった。 まともに恋愛もしないまま。 仕事とその人間関係に追われて、恋愛には常に臆病なまま……。 自分に自信がないまま。 そんな中、布施君に再会して、世界が明るくなった気がした。 中学の時には話もできなかったような別世界の存在。 そんな彼と対等に話し、友達のように接してくれることが嬉しかった。 ズバズバ言いながらも、ちゃんと優しくしてくれて嬉しかった。 『その髪をスタイリッシュにカットして、もっと爽やかな格好で来いよ』 ただ、からかわれているだけなんだろうか? 人を茶化したり、からかったりが、趣味なような男。 やっぱり、からかっただけなのかな? 『からかいだって分かってたけど、来てやったわよ』 そう言ってヤツの高級マンションを覗いてこようかな? そこまで思い、裕子は自分に言い訳ができたように、そっと顔を上げた。  
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