【旋 律】後編 第十一章

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. ――――…… 亜美と薫はガックリと肩を落としながら、声もなく無言で車に乗り込んだ。 助手席のシートに腰を下ろすなり、 「――結局、何も釣れなかったね」 と息をつきながら、そう漏らした亜美に、薫はプッと笑った。 「亜美は釣っただろ、長靴。大物だって大騒ぎしながら」 「もう、それ言わないでよ!」 亜美は頬を赤らめながら、アハハと笑った。 「こういうのってボウズって言うんだぜ」 「そうなんだ。 釣りに行って、ボウズだった時の脱力感ったらないわね」 「まっ、こういうこともありだ。今度はテニスしようぜ、スカッと!」 そう言って車を発進させた薫に、亜美は「わあ」と声を上げた。  
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