【旋 律】後編 第十一章

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  男の子って、何かのキッカケで大きく変わるって言うし、そういえば、布施さんも薫は出世株だって言ってたっけ。 亜美の脳裏に、不意に布施の顔が浮かび、うーん、と唸った。 ……布施さん、切ない恋をしていて告白して玉砕するって言ってたけど、どうなったんだろう? そもそも、実はそれも冗談だったりして。 変な冗談で人をからかってみたと思えば、即座に人の深層心理を突いてくる。 なんていうか、本当につかみどころのない不思議な人だった。 心理学の先生だから、人をあれこれ試してしまう傾向があるのかな? やっぱり、お父さんの友達だけあって頭の中身が普通の人と違うのかもしれない。 叶わない恋をしていると告げた布施の目が切なかったことを思い出し、 ――だけど、あれはきっと本当のことだったんだろう。 綺麗に失恋して、前に進めるといいな。 亜美は『うんうん』と頷いたあと、「さて、荷造りしちゃおう」とベッドを下りた。    
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