【旋 律】後編 第十二章

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  「勿論、大きなことを始めるのに、知識や資格だけが全てじゃないのは分かってる。 でも大きなことを始めるのに知識と資格を持って、土台がしっかりしていることに越したことはないと思うんだ。 それで俺、留学しようと思うんだ」 「留学?」 「アメリカに仲が良かった大学の先輩が留学していて、その人にもずっと相談してたんだ。 俺、アメリカに行って『経営学修士号』を取得したいと思ってる」 そう言って真っ直ぐな瞳を見せた薫に、 「MBAのことね……」 と亜美は戸惑いながら呟いた。 弁護士に並ぶ、最高レベルのビジネス資格。 それで、最近の薫の様子がおかしかったんだ。 亜美は、ふぅ、と息をつき、薫を見た。 「来年から?」 「ああ、1月開講に向けて動きたいと思ってる」 「どこの大学に行くつもりなの?」 「ペンシルバニア大学」 先のことを既に決めている薫の言葉に、亜美は席を立ち「そっかぁ」と天を仰いだ。  
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