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薫は呆然と目を開いた。
「えっ?いいよ、そんな。
しばらくしたら、いなくなるんだし。
……帰ってきてからって、思ってたんだ」
「だから、離れ離れになる前に、ちゃんとお互いを知っておこうよ」
頬を赤めながら俯いてそう告げた亜美に、薫は眉をひそめた。
「亜美は俺がいなくなると思ったから、そんな気になってるだけだろ?」
そう言い、目をそらした薫に、亜美は首を振った。
「私ね、今まで薫のこと好きだったけど信用してなかった気がするの」
「はっ?」
「いつもガツガツ飢えてて薫は私のこと好きだけど、そういうことしたい気持ちの方が強いんじゃないかな、って不安だったの。
でもね薫が私のことを想って、色々考えて、がんばってくれてる姿を見て、そうじゃないって本当に思えたの」
亜美はそう言い、薫の胸に飛び込んだ。
「大好きだよ、薫」
「いや、駄目だよ。
だって、そういうつもりで旅行に来てないから、避妊具も何も用意して来なかったし」
戸惑いながらそう告げた薫に、「ええ?」と亜美は目を開いた。
「そういうのを用意するのは、男のエチケットでしょう?」
「だから、そういうことすると思わなかったから」
「もーっ、なんなのよ、それ」
「じゃあ買いにいく?さっきのスーパーに」
伺うように尋ねる薫に、亜美は複雑な表情を浮かべながらも、なんとなく頷いた。
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