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いつも長めの重たいヘアスタイルだった。
ずっと昔から同じ長さの同じ髪型を続けてきた。
変化が怖かった。
何かに縛られているかのように、新しいことに踏み出せなかった私。
バサバサと切られ、頭がどんどん軽くなって行くような気がした。
布施君がどういうつもりかは分からない。
でも、思ったんだ。
人生で一度くらい、馬鹿になってみてもいいかもしれないって。
裕子は、どんどんスッキリしていく自分の姿を鏡で見ながら、そう思い、
遂にショートヘアになった自分の姿に違和感を感じながらも、まあいいや、と肩をすぼめて苦笑した。
ヘアサロンを出て今度はコンタクトショップに訪れた。
使い捨てコンタクトセットを買い、早速装着して眼鏡をバッグにしまった。
スッキリした髪型に、ずっと愛用していた分厚い眼鏡から解放された自分は、まさに今までとはまるで別人だった。
裕子は変わった自分に嬉しくなりながら、バッグから布施の名刺を取り出した。
行くことができるんだろうか?
一笑されるかもしれないのに……。
裕子は『ふぅ』と息をついた。
―――でも、彼のアドバイスで、こんなに変われた。
そのお礼を言いに行くだけで、いいじゃない。
裕子はまた自分に言い聞かせるように、地下鉄へと向った。
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