【旋 律】後編 第十二章

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  前の旦那の浮気がチラついていて悩んで苦しんでいた頃、 唯一、私を支えてくれたのは17歳の楓くんだった。 このベンチに二人で腰をかけ、バッグから缶コーヒーを取り出し『飲みませんか?』と差し出してくれた楓くん。 胸を貸すわけには、いかない気がするので僕の背中でよければ、そう言って広い背中で泣かせてくれた。 愛しくて切なくて、 ―――思い出すたびに、目眩がしていた。 甘苦しい、想い出。 やがて公園に姿を現したスマートな楓の姿に少し眩しさを感じ、円香はそっと目を細めた。 楓くん。 あなたはあの頃と変わらず……あの頃よりずっと素敵な大人になった。  
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