【旋 律】後編 第十二章

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  「わあ、線香花火なんて何年振りかしら」 「僕も花火なんてもうずっとやってない。あ、でもここ火気厳禁かな?」 「ここは夏の間、手持ち花火だけはOKなのよ。常識の範囲内でって感じで」 「それじゃあ、ひっそりと」 「そうね」 二人は顔を見合わせてクスクス笑った。 楓は一緒に買って来たライターで線香花火に火を点け、そっと円香に手渡した。 「ありがとう。懐かしいな、線香花火」 「なんだか癒されるよね」 小さくパチパチと火花を散らす線香花火を二人は見守り、やがてポトッと落ちた火に、 「あーあ、落ちちゃった」 円香は残念そうに眉を下げた。
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