【旋 律】後編 第十二章

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  「まだ、あるよ。 今度は一緒にしようか。どっちが長く持つか、競おうよ」 「いいわね」 楓は線香花火を二つ取り出し、火をつけた。 互いに並んで線香花火の火を見詰め、 「これって、傍から見たら凄く暗い二人に見えそう」 「声掛けられないかもしれないね」 そう言って笑い合っていると、強い風が吹き同時に火が落ち、またクスクス笑い合った。 円香はそっと隣に座る楓の横顔を見詰め、 「楓くんの横顔って、とても綺麗よね」 とシミジミ漏らした。 「えっ?」 「整っているからなんだろうな。横顔の綺麗な人って、なかなかいないわよね」 「じゃあ、正面から見た顔は間抜け?」 その言葉に円香は思わず笑い、 「どこから見ても、楓くんは素敵だわ。今も昔も」 円香はそう言って線香花火を取り出し、火をつけた。 パチパチと小さな火花を散らす線香花火を見詰め、少し苦しそうに目を細めた。  
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