【旋 律】後編 第十二章

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  何も言えずに俯く円香の背を楓は優しく撫でた。 「……子供のことを浮き彫りして、そのことに囚われて、今の幸せが失われることが怖いよ」 漏らすように切なくそう告げた楓に、円香は目に涙を浮かべた。 「……円香が僕のことを思って子供のことを考えてくれるのは嬉しいよ。 でもそのことで、君が悲しんだり、つらくなったりすると言うなら、僕はとても苦しいくらい切ない。 そんなことで、こんなに幸せなのに、多くを望んで見失いたくないって心から思うよ」 「楓くん……」 「僕のことを心配してくれてありがとう。でも、もうそんな心配はもうしないで。 子供なら亜美がいるんだ。 誰かに僕の学んだことや、意志を継いでほしいと思うことはあるけど、それは僕の多くの学生が僕の教えたことを吸収し巣立ってくれる。 ……僕はこの上なく恵まれているよ」 そう言って柔らかく微笑み、優しく肩を抱き寄せた楓に、円香はウッと涙を流した。  
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