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「この先、僕の友人達の多くが結婚していって、やがて子供が出来て、その子に会いに行くこともあると思う。
その度に円香は僕を思って、つらい思いをするんじゃないか心配だよ。
……どうか生涯今夜のことは忘れないで。
僕は本当に、もうこれ以上ないくらい幸せなんだ。
――円香の側にいられるんだから。僕は君がいてくれたらそれでいい」
円香は大粒の涙を流しながら、何度も頷いた。
忘れられるはずがない。
今この時のことを……。
以前、一緒にこのベンチに並んで座ったときは、あなたは17歳の少年だった。
『頭でっかちな故に動きの取れない、赤ちゃんと一緒です』
そう言って、自分は何の力もない、と苦笑を浮かべていた楓くん。
そんなあなたは、なんて大きな大人になったんだろう。
こんなに大きな包容力で、私を包んでくれる。
楓くん、私こそ、
私こそがこれ以上ないくらいに幸せだというのに。
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