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32年間、枯れたような人生を送ってきて、いきなりこんな幸せになるなんて夢にも思わなかった。
「近々、裕子の親にも挨拶に行かなきゃな。
同じ中学だったくらいだから、実家同士近所だろ?」
「うん、近所だよ。うちの親、布施君の家知ってるもの。
凄いお屋敷よね。そんな布施君と結婚するって言ったら、きっとひっくり返るわ」
楽しげにそう言った裕子に、布施は眉をひそめた。
「……ああ、一つ頼みがあったよ」
「えっ?」
「俺、親のスネで大学院まで出してもらったけど、今後は親から何ももらうつもりはないんだ。財産も全て放棄するつもりだ。
そのことだけ心に留めておいて欲しいし親の財産は、あてにしないで欲しい。
その代わり俺なりにがんばってお前を楽させるから」
強い口調でそう言った布施に、裕子の胸は熱くなった。
「うん、分かった」
とても、しっかりした人だ。
この人なら尊敬できる。
きっと、やって行けるだろう。
裕子は布施を見ながら、強くそう思った。
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