【旋 律】後編 第十四章

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  「僕は円香より早く死ねるなら、どんなに若くても本望だけどね」 そう言った楓に、円香はムキになったように身を乗り出した。 「だから冗談でも、そんなこと言わないでって言ってるのよ」 そんな二人の姿に、微笑ましさを感じ裕子は自然と頬が緩むことを感じていた。 この2人は夫婦なんだ。 どう見ても奥さんの方が年上だけど、とても仲良さそうな素敵な夫婦だな。 そう思っていると、 「そうだな、円香さんの言うとおりだよ。早死になんて縁起でもない。冗談でもそんなこと言うなよ」 と円香と同じようにムキになったように声を上げる布施の姿に、裕子はギョッとして目を開いた。 布施君ったら、ただの冗談に何をそんなムキになるんだろう? なんだかどんどんイメージが違って来ているような? と裕子は解せなさに小首を傾げていた。  
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