【旋 律】後編 第十四章

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  ほんの冗談だった。 楓が不愉快そうに顔をしかめる姿を見たあとに『冗談だよ』と笑おうと思っていた。 楓は小さく笑って、布施をギュッと抱き締めた。 「――――ッ!?」 「幸せになれよ」 楓はそう言って布施の背中をポンッと叩き、温室へと向かった。 布施は目を開き、呆然と立ち尽くした。 広瀬に……抱き締められた。 これまで、あいつに対していかがわしい想像をしたことはなかった。 いや、いかがわしい想像など、してはいけないと思っていた。 自分の中でそれほど神聖な存在だった。  
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