【旋 律】後編 第十四章

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  楓と円香の14年越しのエピソードを裕子に話して聞かせると、 「すごい」 と裕子は心底から感嘆の息をついた。 「そうだったんだ……。 そうして巡り会って、また恋に落ちたのね。素敵だわ」 「なっ、文学の世界だろ?」 布施はクスクス笑った。 「広瀬さんってなんだか凄い人ね。物凄く頭がいい感じなのに、全然鼻にかけてなくて、物腰がとても柔らかくて自然体で、とても透明感のある人」 「だろ?あいつは哲学者だからな」 「哲学者と言うより、高尚な……悟りを開いたお坊さんみたいな雰囲気を持った人ね」 少し考えながらそう告げた裕子に、布施はアハハと笑った。 「なるほどねぇ。上手いな、その表現」 「本気で言ってるのよ」 「分かってるよ」 布施はそう言って愉快そうに口角を上げた。
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