【旋 律】後編 第十四章

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  布施はそんな裕子にハンカチを差し出した。 「裕子、結婚するに当たって 言っておきたいことがあるんだ」 その言葉に裕子はハンカチで目頭を抑えながら、なんだろう?と顔を上げた。 関白宣言? 「言っておきたいこと……というか、頼みというのか」 そう言う布施に、裕子は眉を寄せた。 どんなことを言うんだろう? 結婚後は仕事を辞めて、家に入れとか? ああ、でも結婚は嬉しいけど、仕事をすぐには辞めたくないな。 それとか俺は必ず浮気をするから、黙認しろとか? そんなこと言われたら、どうしよう。 裕子がそんなことを思い、目をグルグルさせていると、 「明るい家庭にしような」 と笑顔でそう告げた布施に、裕子は「へっ?」と声を上げた。  
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